「ワーク&ケアバランス研究所」主宰 和氣美枝
2015年11月06日 05時20分
親や伴侶など家族の介護を理由に勤めていた会社を辞める介護離職。その数は年間10万人を超えると言われています。安倍政権は先ごろ発表した「新3本の矢」の中で、2020年までに介護離職をゼロにするという目標を打ち出しました。職場で中心的な役割を担う人が離職に追い込まれると、会社には大きな痛手となります。それに伴う経済的な損失がどれだけ大きいか、国もようやく気付いたようです。何より働き盛りの時期に仕事を辞めてしまうと、人生に大きな悔いを残してしまいます。家族に介護が必要になったら、会社は辞めるしかないのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。ちゃんと道はあるのです。
選択肢が見えなくなる
研修会で話す和氣美枝さん(写真提供:ワーク&ケアバランス研究所)
私が主宰をしている「ワーク&ケアバランス研究所」では、仕事と介護の両立で悩む人を支援するためにセミナーを開くなどの活動をしています。そんな中で多くの事例を見てきました。
千葉県在住で大手商社に勤めていた50代の男性は「会社を辞めなければよかった」と介護離職したことを後悔しています。ひとり暮らしをしていた遠方のお母様が倒れ、医者から「誰か傍そばについていた方がいいですね」と言われたのです。
一人っ子の彼は奥様を自宅に残し、会社を辞め、ひとりで実家に戻りました。会社を辞めた当初、彼は「再就職先はすぐ見つかるだろう」という甘い気持ちもあったと言っていました。しかし、現実は全く違っていました。50社以上に履歴書を送ったけれど面談にさえも至らないのです。最終面談まで行ったこともありましたが、結果は不採用でした。
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彼は日に日に自信をなくしていきました。「もっといろいろ調べてから動けばよかった」とつぶやいていたこともあります。介護保険サービスの利用の仕方や介護をしながら働く人への地域の支援などについて、何も調べず辞めてしまったことを後悔しています。
収入はパートで働く奥様の給料のみ。マイホームのローンも残っています。貯金も底をつく寸前です。今はお母様の年金で生活をしていますが、この先の不安は募るばかりのようです。
私が常々言っていることですが、介護者の不幸は「選択肢が見えなくなること」です。介護が始まったからといって、会社を辞めなければならないことはありません。今までと同じように、自分の人生は自分で選択できるのです。
ただ、見たことも聞いたこともない事象が目の前で次々に繰り広げられ、「分からないことさえ分からない」という状態に陥ると、パニックや憤りで選択肢が見えなくなります。それで、例えば「会社を辞めるしかない」と、誰に相談することもなく結論付けてしまうのです。
企業セミナーをやっていると、終わった後のアンケートで「介護が始まったら自分の生活を切り崩さないといけないのだと思っていました」という声は少なくありません。
母親が認知症、会社をたたんだ経営者も
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中小企業を対象とした仕事と介護の両立のための勉強会(写真提供:ワーク&ケアバランス研究所・株式会社NENGO)
東京で小さなIT関係の会社を経営されていた男性の話です。この方は親の介護で仕事ができなくなり、全従業員を他の会社に転職させた上で会社をたたみました。認知症を患ったお母様はたびたび徘徊はいかいするので、目が離せなかったようです。
しかしながら、彼は経営者です。小さな会社でしたが数名の従業員も抱えておられました。独身である彼には、お母様を見てくれる他の家族もいませんでした。「会社をたたむ以外、方法はなかった。従業員には本当に申し訳ないことをした。介護との両立なんかできっこない!」と、彼は言います。
とはいえ、介護離職をしていいことは、ひとつもありません。精神的、肉体的、経済的な負担が増えます。会社という社会との接点がなくなるので、まず、精神的に孤立していきます。もちろん要介護者に関わるケアスタッフなどの存在はありますが、あくまでも要介護者を通しての関わりです。介護者のアイデンティティーは気づかぬうちに失われていくのです。
また、要介護者の疾患によっては通常のコミュニケーションが難しくなる場合もあります。こういった状態の要介護者との生活は、精神的なストレスを増やすこともあります。さらに、「収入がない」という現実が将来の不安につながり、情緒不安定になる方も多くいます。
肉体的負担が増えるのは、二つの原因が考えられます。ひとつは、仕事をしていないので時間があり、家事や介護をしてしまうということ、もう一つは、収入がないので、介護保険サービスの利用を控え、自らが要介護者の身体介護などを担ってしまうということです。最後に経済的負担の増加ですが、これは仕事をしていないのに介護の費用だけがどんどん膨らんでいくわけですから、容易に想像がつくことと思います。
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